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その3 新たな出発

 
好評だったハンク・ジョーンズとのコラボレーションもマネジメントの問題などで現在は中断していますが、尾田悟は若手を中心とした自己のグループで活躍するとともに、さまざまなセッションを行い中堅から若手の育成にも尽力しています。

尾田悟のニューファイブスポット以来のメンバーたち



野中英士(b)



岡村誠士(g),



バイソン片山(ds)



須藤俊也(p)

 現在の主な活躍の場所は、月1回の六本木バードランド出演や銀座スイングシティー、原宿キーノートなどのジャズクラブ出演を始めとして積極的なライブ活動を行っています。
 近年の尾田悟のライブセッションで特に印象深いのは山下洋輔とのセッションです




最初は九州で簡単なセッションが山下洋輔の強い希望で行われたのですが、尾田悟は当然山下洋輔のスタイルとは無理なんじゃないかと消極的だったそうですが、このセッション、山下洋輔本人は相当に気に入ったみたいで、その著書でも職人尾田悟との共演体験を楽しそうに記述していました。その後、名古屋での共演を行い、ついに東京でも、六本木バードランドや新宿ダグでも行い、この組み合わせの音楽の凄さと楽しさを私たちの前に披露してくれたんです。
 「俺はフリーなんて全然できないんだけど、山下洋輔はいつものままでいいっていうからさ」「山下洋輔はフォービートやらしても超一流だな」なんて演奏の合間に尾田悟は笑ってつぶやいていました。
 



山下洋輔







 また、地方では大西純子とのセッションを行っています。 **このセッションの詳しい情報をSさんからお教えいただきました。
 1995年12月12日 会場は新潟市の万代シルバーホテル、サントリー・ホットJazz{OLD&NEW}主催はサントリー&新潟総合TV局です。
 当初は尾田悟&HANK JONES GREAT JAZZ QUINTETの公演だったのですが,ハンクの体調悪化のための急遽帰国により,代役としては当時大活躍中だった大西純子に白羽の矢がたち,彼女の激しいスケジュールを縫って,大西純子が出演を快諾してくれたということでした。
メンバーは
尾田 悟(TS)
福村 博(TB)
大西 順子(P)
野中 英士(B)
田鹿 雅裕(Ds)
小田 陽子(Vocal)

演奏曲目は
BARNEY'S TUNE,バードランドの子守歌,日曜はダメよ,酒とバラの日々,ALONE TOGETHER,HOW HIGH THE MOON,ALL OF ME,AS TIME GOES BY,ELAVATION,FIVESPOT AFTER DARK,BUT NOT FOR ME,捧ぐるは愛のみ,カーニバルの朝,枯葉,TAKE THE A TRAIN
などです。当夜の演奏は,大西順子の彼女独自のアグレッシブで歌心あふれるハードでスインギーなピアノプレイに触発された尾田悟の熱いプレイが素晴らしかったそうです。また,尾田悟の愛奏曲目のスタンダードナンバーでの大西のプレイが絶品だったそうです。ハンクの急病がよんだ素晴らしい一夜の夢のセッションとなったそうです。また,東京でもこの顔合わせが実現してくれたらと希望します。

 

マイナーレーベルでのレコーディング
 
尾田悟の国内でのこのような活躍を是非記録にとのことで、寺田さんというオーディオの識者が自ら起こしたレーベル「オーディオ・パーク」が尾田悟を連続して録音しています。
第1弾が尾田悟のレギュラーグループによるもので



from Kansas to Be-Bop
SATORU ODA &HIS QUARTET

TERADA AUDIO PARK APCD-1001
SATORU ODA(T)
TOSHIHIKO OGAWA(P)
EIJI NONAKA(B)
MASAHIKO TAJIKA (D)
july 2,1995.

LESTER LEAPES IN
JUMPIN'AT THE WOODSIDE
SCRAPPLE FROM THE APPLE
MACK THE KNIFE

などタイトル通り、尾田悟がカンサススタイルからバップまでジャズと自分の歴史を振り返るというライブセッションです。
 
 第2弾はベテラン秋満義孝とのデュエットのライブセッション




SATORU ODA &YOSHITAKA AKIMITSU

TERADA AUDIO PARK APCD-1005
 
 このレコーディングはスイングの超ベテランピアニスト秋満義孝とのセッションで、秋満の唯一無二のスタイルと尾田悟の共演です。このスタイリストどおしの共演は現在,他では決して聴けるものではありません。

 第3弾はヤングライオンズとでもいうべき若手テナー3人とバトルアルバムです。アレンジは尾田悟自身と守屋純子が担当




SATORU MEETS YOUNG SIX THE TENOR SUMMIT
TERADA AUDIO PARK APCD-1007

尾田悟(T)
守屋純子(P) 
三木俊雄(T) 
安保徹(T) 
右近茂(T) 
杉本智和(B)
田鹿雅裕(D) 

 これは尾田悟が孫ほど年の違う若手とテナーバトルを繰り広げているものです。若手とのスタイルの差と表現力の差が如実に現れている作品です。また、守屋純子のアレンジメントの才能もすばらしいものがあります。
このようなレコーディングに象徴されるように現在の尾田悟は自己のグループや若手との積極的な共演など日本のジャズシーンで幅広く積極的な活動を繰り広げています。
 近年では尾田悟と同じ年代の音楽家が活動をやめたり、物故したりするなかでますます充実しているのです。なお、近々、山下洋輔とまた、共演するという話があるそうで決定したらまた、お知らせいたします。





最近の印象

 このところ、尾田悟はかつて戦後のジャズ全盛期以後のジャズ不況のなかでレコーディング活動を行っていた映画音楽を、振り返って演奏してみたり、彼ならではのさまざまなレパートリーの曲を(ボサノバ、ラテン、シャンソン、それに、なつかしのテネシー・ワルツやロシア民謡まで)モダンジャズの名曲やスタンダードとともに今まで以上に演奏するのです。私には、尾田悟が自己の音楽人生を振り返って、映画音楽の時代、ムードテナーの時代などいろいろな音楽体験を積極的に肯定して、もうだれも演奏しなくなった曲目をいとしんでいるようにも思えます。

Bflat赤坂を中心に意欲的なセッション活動も行っています。







山本剛(p)、尾田悟(ts) Bflat赤坂のライブ




海野雅威(p) セシル・モンロー(ds) 尾田悟(ts) 鈴木良雄(b) Bflat赤坂のライブ




尾田悟(ts)、鈴木良雄(b) Bflat赤坂のライブ


 

マデリーン・イーストマン(vo)、尾田悟(ts) 横浜ジャズプロムナード 



田辺充邦(g)、尾田悟(ts) Bflat赤坂




尾田悟(ts)、荒巻茂生(b)、川嶋哲郎(ts)



4テナーズの録音以来、Bflat赤坂、TOKYO TUCなどで、三木俊雄(ts)と守屋純子(p)を中心メンバーに4テナーズのライブを繰り広げるようになりました。



尾田悟(ts)、三木俊雄(ts)、右近 茂(ts)、安保徹(ts)




守屋純子(p)



尾田悟(ts)、三木俊雄(ts)、岡 淳 (ts)、浜崎航(ts)


欧州との交流
 ここ,数年尾田悟は,欧州からの招聘に応えて,英国を初め,スペインやオランダなどで,積極的にツアーを行っています。「テナー一本さらしにまいての行脚だよ。」との事ですが,奥様と二人のツアーには理想のジャズおしどり夫婦の感が。欧州では,スタイルの流行に惑わされる事が少ないようで,尾田悟の音楽を好むファンも非常に多いようです。また,いわゆる,スイング派や中間派とも称せられるメインストリートジャズが非常に愛好されています,こうした傾向ですので,尾田悟の音楽が驚愕を持って受け止められ,賞賛されるのもうなずけます。
 2000年には欧州のツアーで知り合った,オランダ名人達を招聘してのツアーも成功裏に行われました。



メンバーは
ANTOINE TROMMELEN(ss・ts)
RIC VAN BERGH(br)
HARRY KANTERS(p)
尾田悟(ts)
岡村誠史(g)
野中英士(b)
バイソン片山(dr)
特別ゲスト 千装智子(fl)
 神戸ジャズストリート出演を最初に東北地方のツアーを行い最終公演が,10月14日原宿キーノートでした。
 ますます,盛んに音楽活動を尾田悟は,どんどん若返っていくようです。
 そういえば,最近ステージで妙に尾田のコーンのテナーが光るなーとは思っていたのですが,楽器をこれまでのきらきら光るところなど無いほどメッキが剥げた楽器から別のコーンに変えていたのが尾田悟本人から言われるまで気がつかなかったのです。尾田に言わせるとこれまでずーっと吹き続けたコーンは音が抜けて素晴らしい物なのですが,これ以上の音にはならないものとのことです。今回使い出したコーンはメッキの輝きもきれいな物なんですが,あまり使い込まれておらず,音も抜けない若い楽器だそうです。これまでも,何度か取り出しては見ても,これまでの楽器の方が楽だという理由でステージでは使用しなかったのだそうです。ところがここ,2〜3ヶ月急にこれまで使用してこなかった楽器を熟成させて自分の音にしようというチャレンジングな気持ちになって,あと何年かかるか分からないがやってみようと言うことでステージに持ってきたそうです。こんなチャレンジング精神にも尾田悟の音楽にかける若々しい感性が発揮されているようです。

横浜ジャズプロムナード




尾田悟(ts)、三木俊雄(ts)、小池修(ts)




2006年10月8日横浜ジャズプロムナードで、バイブの名匠 DAVE PIKEと共演


楽屋でのベテラン総結集




上段から、尾田悟(ts)、杉原淳(ts)、下段、五十嵐明要(as)、原田忠幸(bs)


2016年9月5日
尾田悟さんが都内でご逝去されました。


 享年88歳。 謹んでご冥福をお祈りいたします。
二度の大病も持ち前の、海軍軍楽隊精神で乗り越えて、最後まで日本ジャズ界の最前線で活躍し、 後輩を引っ張って行かれました。
私は自由が丘のニューファイブスポットで、初めて尾田サウンドを聴いて以来40年聴き続けてきました。
まだ、尾田さん不在の実感がわかないので、心の整理もまったくついていません。
 忙しさにかまけて、尾田さんと半年以上お会いしていなかったので、尚更です。
尾田夫人を前に、尾田さんのご仏前に手を合わせて、悔やむ事しきりです。
尾田さんは、ここ数ヶ月体調が思わしくなかったそうですが、先日の横須賀トモダチJAZZに出演依頼があり、とても張り切っていたそうです。
尾田夫人曰く、きっと軍楽隊出身の思いが、どうしても横須賀で演奏することにつながったのでしょう。 9月が近づく中で体調が大きく崩れ、周囲からは、出演は難しいとお止めもしたそうです。
しかし、尾田さんは、そんな声を背にして、直前まで、完璧な演奏を求めてリハーサルを行いましたが、 出演直前倒れられ、そのまま、9月5日に旅立たれました。 音楽に殉じたサムライ、尾田さんらしい生き様だったように思われてなりません。


2016年12月29日Bflat赤坂で尾田悟さん追悼 4 TENORS LIVE/Satoru Oda & 2016 FAREWELL Liveが、開催されました。




写真は左から、三木俊雄(ts)、浜崎航(ts)、岡 淳 (ts)、吉本章紘(ts)、高橋徹(ds)、守屋純子(p) 、高瀬裕(b)



左から、守屋純子(p)、三木俊雄(ts)、浜崎航(ts)、高瀬 裕(b)、 吉本章紘(ts)



岡 淳 (ts)と高橋徹(ds)、吉本章紘(ts)



特別ゲストの 薗田勉慶((tb)(園田健一とディキシーキングスのリーダー)と吉本章紘(ts)
曲は(Back Home Again in) Indianaで、ドナリーの原曲です。
ディキシーの名手、薗田勉慶(tb)は(Back Home Again in) Indianaを演奏し、吉本章紘(ts)はドナリーを演奏するという何とも贅沢なセッションです。圧巻の熱演でした。




さらに、ゲストは尾田悟さんとたびたび競演した野村佳乃子(vo)
尾田悟を追悼する素晴らしい演奏が繰り広げられました。