尾田悟vs山下洋輔の一夜

1999年3月26日(金)原宿キーノート・開店1周年記念スペシャル・ジョイント・パーティーということで、尾田悟(ts), 山下洋輔(p), 野中英士 (b), 屋代邦義(ds)のライブが行われました。


 この組み合わせは既に何度か聴いていますが、いつ聴いても凄い演奏です。基本的には、尾田悟プラスゲスト山下洋輔の枠組みですので、全曲尾田悟選曲、いっさい事前打ち合わせ無し。
曲目は、All the things you are,I surrender dear,Just friends,Body and Soulに加えて、エリントンナンバーを3曲、あと何曲か私がタイトルをど忘れした曲があり、それに Five spot afterdark,Sunny side of the street,最後にLover come back to me 。
 当夜は、尾田悟から山下洋輔の芸術選奨文部大臣賞受賞のお祝いがあって、何かと盛り上がりました。尾田悟主導の演奏ですので、オーソドックスな形式のジャズですが、そこは、山下洋輔、強烈なスイング感とハードドライビングな演奏です。やっぱり、山下洋輔は現代ジャズピアノの巨匠ですね。普段とは異なるスタンダード曲ばかり、そして、オーソドックスなスタイルに終始しているのに、ここでの演奏は他の誰も到達し得ない4ビートジャズ演奏の極みでした。尾田悟も普段のサウンドよりも,何か動的で、強くきらびやかな印象です。
 屋代邦義(ds)の強烈なビート感と"ため"とこぶしのきいたドラミングも良かったです。ベースの野中英士はいかにもこの人らしい実直な演奏に一層野太いサウンドが出ていたような。曲目で印象的だったのは、"Body and Soul"が普段の尾田悟の演奏よりも一層深みが増して響いてきました。
 尾田悟から、例のヴァーブの50周年記念のカーネギーホールのコンサートのビデオを見て感心したと話があり、彼の年代ではカーネギーホールのコンサートは夢だったこと、そして、たっての希望で、当夜、山下洋輔が演奏した "Parrisian Thoroughfare" をリクエスト。何か話してと尾田悟からマイクを渡された山下洋輔からは、この曲が主催者側からの強いリクエストだったこと、バド・パウエルと同じ演奏時間で、そして、タキシード着用という依頼があった、本人曰く「三重苦の下」での演奏だったことなどの楽屋話をしてくれました。この日キーノートに駆けつけた人には、最高のプレゼントの、"Parrisian Thoroughfare" の感動的なソロ演奏が聴くことが出来たのでした。私個人は、どういうわけか、" Five spot afterdark"の演奏に感動してしまいました。ブルージーで哀愁溢れる山下のソロが最高でした。また、「尾田悟vs山下洋輔」が再び近い日に実現すればいいな。何度でも聴きたいです。