守屋純子オーケストラ
TRIBUTE TO
DUKE ELLINGTON




2001年3月7日神田岩本町のTOKYO TUCでの守屋純子オーケストラシリーズのライブに行って来ました。
今回はTRIBUTE TO ELLINGTONというタイトルで,守屋純子オーケストラがエリントンの作品を始め,これまでの守屋自作品やモンクやミンガスなど守屋のアレンジ作品を取り上げます。



文化庁,芸術文化振興基金育成事業に選定されたオーケストラシリーズの平成12年度最終回のライブです。
こういったことが伝わったのか,これまでの活動の好評ぶりが広く知れわたっかのか,2日前にはソールドアウトということでした。当日のTOKYO TUCはいつものテーブルを取っ払ってずらっと椅子を並べましたが,それでも,当日客を断る姿を見られるなど,超満員です。児山紀芳氏のトークでステージは始まりました。



メンバーはいつもどおり,第一線で活躍中のミュージシャン総出演という感のあるオールスターオーケストラです。
(tp):小幡光邦、菊池成浩、奥村晶、牧原正洋(tp)
(tb):片岡雄三、中路英明、佐藤春樹、河野聡(basstb)
(sax):小池修(ts)、つづらのあつし(ts,fl)、近藤和彦(ss,as)、緑川英徳(as)、
   宮本大路(bs,bcl)
(ds):大坂昌彦
(b):納浩一
アレンジ,指揮,(p):守屋純子





第一部
BRIGHT MOMENT(守屋純子作),
クォーター(守屋純子作),
13日の金曜日(MONK),
UNDER WATER WORLD(守屋純子作),
SPIRAL(守屋純子作),
第2部
WALTZ(守屋純子作),
バイーア(MONK),
A TOUCH OF MINGUS(守屋純子作),
REINCARNATION OF LOVE BIRD(MINGUS),
AFRICAN FLOWER(ELLINGTON),
COTTON TAIL(ELLINGTON),
そして,聴衆の熱狂に応えてアンコールは守屋純子のソロでMOOD INDIGO(ELLINGTON),






第一部では守屋純子のオリジナル作品やこれまでのシリーズで発表して好評だった13日の金曜日,そして,守屋純子の新作UNDER WATER WORLD(ハイソのために書き下ろした作品だそうで,マリア・シュナイダー風という注文だそうですが)が演奏されました。このオーケストラもシリーズを重ねたことの結果か,演奏の充実ぶりには驚かされました。特に今回は一層広がったダイナミックスとそれぞれのパートの色彩感が一層豊になったような感じで,えっ!!こんなに凄かったっけ!!と思わず声がでました。まさに,現在のオーケストラ界の最前線に立っていると実感しました。



BRIGHT MOMENTでのつづらのの充実したソプラノサックスソロ,小幡のいかにもビッグバンドのトランペットを熟知したソロ,
クォーターは特徴的な幾何学的なテーマの曲で小池の渾身のテナーソロ,中路の自在なトロンボーンソロ


13日の金曜日はマーチのような強烈なリズムにのって,守屋のペンはモンクサウンドをオーケストラに色彩感豊かで変幻自在なダイナミックスを見事に描き出しました。佐藤のトロンボーンソロと緑川のアルトソロもモンクのアブストラクトな世界にマッチした素晴らしいソロ



UNDER WATER WORLDは透明感あふれる静粛な世界を表した美しいテーマに乗って守屋ならではのオーケストラサウンドがあらわれます。宮本大路の美しいバリトンと奥村のトランペットソロ,河野聡(basstb)と牧原正洋(tp)の美しいソロ



SPIRALでの近藤の疾走するアルトソロ,片岡の切れ味豊かなトロンボーンソロ





若き名人納浩一のベースの充実したサウンドがオーケストラサウンドの基礎部分をがっちり支えます。耳を澄ますといつも,そのベースからは美しい旋律がなにげなくこぼれてきます。さらに,大坂昌彦の曲調を押さえた見事なドラミングが音楽のスケールを一層大きなものに仕上げます。サウンドの多彩さは特筆すべきものでさすが第一人者です。



第2部では守屋純子自作曲の幾何学的なテーマが特徴的なWALTZで開始しました。奥村のトランペットと守屋のピアノソロ。


宮本大路(bs) のカバサとバリトンサックスのユーモアあふれるソロから始まったバイーアでは,牧原のトランペット,つづらののソウルフルなテナーソロ,特にこの曲ではこのオーケストラのダイナミックスの幅の広さに感嘆しました。
ミンガス解釈を素直に表したサックスセクションによるA TOUCH OF MINGUSから続いてREINCARNATION OF LOVE BIRD(MINGUS)。


美しい5サックスのハーモニーが守屋のミンガス観はこれだという美しいメロディーを奏で,続いて圧倒的なダイナミックスと多彩なサウンドと混沌とした叫びが素晴らしいREINCARNATION OF LOVE BIRDはまさに,当夜の白眉でした。緑川のアルト,佐藤のトロンボーンソロ



続いて,納の名人芸の美しいベースソロから雰囲気豊かにはじまったAFRICAN FLOWER,近藤の伸びやかなサウンドのソプラニーノソロ,中路のトロンボーンソロ
COTTON TAILではエリントンサウンドを現代に見事に昇華したアレンジの妙


小池のエネルギーとパワーあふれる絶品のテナーソロ



片岡の歌うトロンボーン






小幡の輝かしいトランペットソロ
アンコールの声に応えて,守屋はこのオーケストラのあとでピアノソロは照れくさいといいながら演奏したMOOD INDIGOでは,まさによく言われる作曲家のピアノ演奏でした。守屋のピアニストとしての実力は勿論素晴らしいものですが,それ以上に,語るべきストーリーを持っているものだけが描ける文学作品のように雄弁な演奏で思わずため息が出るほどのものでした。

今回のライブでこの素晴らしいオーケストラからしばらく遠ざかるのかと思っていましたが,嬉しいことに,5月15日(火)に次回のライブが予定されています。
TOKYO TUC 文化庁芸術振興基金助成公演
<守屋純子オーケストラ>納浩一(B)、大坂昌彦(DRS)近藤和彦(AS)、緑川英徳(AS)、つづらのあつし(TS)、小池修(TS)、宮本大路(BS)中路英明、片岡雄三、佐藤春樹(TB)、河野聡(B-TB)エリック宮城、菊池成浩、奥村晶、木幡光邦、岡崎良朗(TP)


さらに,5月には,ドン・シックラーをプロデューサー(守屋の前作でもプロデューサー)に迎えて,守屋純子オーケストラのファーストレコーディングが敢行されるとあって,ますます期待は膨らみます。